2016.11.21
※終了しました。
韓国労働社会研究所・金鍾珍研究委員招請シンポジウム
龍谷大学法学部・矢野昌浩教授を代表とする共同研究G《科学研究費基盤研究(B)「失業・半失業の常態化と労働者の生活保障」》では、2017年2月、韓国労働社会研究所の金鍾珍(キム・ジョンジン)研究委員を招いて、以下の通り、特別シンポジウムを企画しています。
金鍾珍さんは、韓国・ソウル市の朴元淳市長が進めている自治体積極的な労働政策実現のために、研究者として活躍されている気鋭の研究者です。ソウル市は、朴元淳市長在任期間(2011.10-2018.6)に、「希望の約束」実現を目指しています。
中でも、自治体として本格的な労働政策を重視して、既に、約8000名もの非正規職の正規職転換、生活賃金条例の制定、感情労働条例の制定、労働権益センター設置などの目覚しい成果をあげています。
これらの政策作成、実現過程で大きな力を発揮して来られたた金鍾珍さんから直接、お話を聴き、質疑・討論する機会を設けました。関心をお持ちの皆さんの参加を広く呼びかけます。
担当・文責 脇田滋(龍谷大学法学部)
日時:2017年2月14日(火)10:30〜17:00
場所:龍谷大学深草学舎21号館404教室
報告 金鍾珍研究委員「ソウル市労働政策の展開とその意義」
コメント1 矢野昌浩(研究G代表、労働法専攻、龍谷大学法学部教授)
コメント2 伍賀一道(金沢大学名誉教授)
司会 脇田滋
通訳 呉民淑さん
対象:関連分野の専門家、弁護士、関心のある市民団体、労働団体メンバー
【参考:脇田試訳】社説・コラム:ニュース:ハンギョレ
[なぜならば]第一歩を踏み出した「労働と共にするソウル」/金鍾珍
登録:2015-05-11 18:47
ソウル市が地方政府として初めて労働政策基本計画を発表した。労働政策課新設3 年ぶりの結実である。地方自治体が地域労働市場と労働政策に関心を持って政策を推 進した珍しい事例としての意味は小さいものでない。この間、地方自治体の労働政策 は、経済政策課や職場政策課に属する一チーム水準で扱われた。労働問題が経済政策 の下位領域あるいは雇用の一部分と認識されていたからである。
ソウル市労働政策基本計画は、条例制定、組織(14人)、政策事業(61の課題)、予算 (年間517億ウォン)、モニタリング(履行評価体系)等、労働行政の基本骨格をすべて 備えている。また、雇用安定(非正規職の正規職化)、所得向上(生活賃金制施行)、労 働時間短縮(時間管理センター設置)、労働安全(産業災害、感情労働)のような主な政 策がすべて網羅されている。中央政府およびソウル市の25自治区とガバナンスを通じ て労働政策を広げるという構想も目を引く重要部分である。制度の設計および執行と 履行など、政策的連係性を高める意味のある計画だ。
ソウル市は、労働政策の最優先課題として中高生はもちろん公務員の「労働教育」 を大幅強化すると強調した。労働教育を単純に労働3権の紹介に終わらせないで、対 話と討論の参加型教育に拡張するということである。労働教育を正規教科課程に含ま せることができなくても、主な先進国の市民教育カリキュラムのように、労働人権の 感受性を高める方式で進めるのである。教育を通じて、労働が市民の生活の中に深く 溶け込むようにする構想である。
ソウル市労働政策は、中央政府との差別性を浮び上がらせることにだけ終わるもの ではなく、法制度の死角地帯を解消して、脆弱階層問題に集中する計画である。地方 政府の労働政策がなぜ必要なのかを示す重要部分である。ソウル市は、雇用労働局新 設まで検討中である。包括的で独立的な労働専門担当組織といえる。
ドイツやフランスの地方自治体事例のように、労働時間短縮や感情労働ガイドライ ンのようなわが国社会の労働議題を先導することを期待してみたい。持続可能な労働 政策は、社会的対話を通した公論の場の形成と多様な利害関係者が参加する議論構造 の中で可能である。本来の政府であれば、労働者と市民に政策内容を一方的に伝達す るのではなく、「良いモデル」を示すことによって、市民が自ら同意して受け入れる ようにしなければならない。労働と共に歩むソウルは、もはやその最初の歩みを踏み 出した。市民社会のより多くの関心と声が合わさる時、この道はさらに固いものにな るだろう。
金鍾珍(キム・ジョンジン)韓国労働社会研究所研究委員
http://www.hani.co.kr/arti/PRINT/690672.html