2021.10.5
非正規労働者の権利実現全国会議
共同代表 中村和雄(弁護士)
2018年6月に一連の働き方改革関連法が成立しました。労働者派遣法も改正となり2020年4月から施行となりました。
「同一労働同一賃金」が目玉とされ、派遣労働者についても派遣先の労働者との差別が許されないことになったと宣伝されました。派遣労働者の待遇を決めるルールが大きく変わりました。
ところが、派遣法改正には大きな抜け穴がありました。朝日新聞に事例が紹介されていましたので紹介します。
「A学校で英語講師をしていた米国籍の40代男性は、同僚の給料を知って驚いた。男性の雇用主は職場のA学校ではなく、語学学校を運営するバークレーハウス(東京都千代田区)であり、男性はそこから派遣されて働いていた。男性の基本給は月27万円。一方、同じネイティブでも直接雇用の同僚の基本給は8万円多い35万円だった。男性は「同僚よりも週2コマ多く担当し、帰国子女向けの特別授業も受け持っていた。あまりの金額差にショックを受けた」と話す。
男性は学校側に「同一労働同一賃金」について相談するようになった。「そのことをきっかけにいやがらせを受けるようになった」と男性はいう。男性は派遣元に是正を求めて相談した。すると「労使協定があるので派遣先との待遇差があっても問題にならない」という返答だった。」
今回の派遣法改正では、派遣労働者は派遣先の労働者との労働条件の格差について不合理な差別は基本的に許されないことになっています。
ところが、改正法は例外として、派遣元において派遣労働者との間に有効な労働協定を結んだ場合には、派遣先労働者との格差が存在していても許されることになっているのです。
多くの大手派遣業者は、この例外規定を根拠にして、派遣会社の中で労働協定を作成し、派遣先労働者との差別を容認しているのです。
こうした例外扱いによって、派遣労働者には派遣先労働者との「同一労働同一賃金」は適用されないのです。
派遣法を改正して、この脱法的性格のある例外規定を削除することが必要です。