Q.
10年以上、5号業務(データ入力)で働いていますが、みなし雇用にはならないのでしょうか?
回答日:2018/09/07
結論から先に言うと、現時点ではみなし雇用にはなりません。
1 「5号業務」とは、改正前の労働者派遣法における派遣期間制限のない政令26業務のひとつですが、2015年9月30日に施行された現行の派遣法では、政令26業務による派遣可能期間の区別がなくなりました。
現行の派遣法は、業務内容にかかわらず、派遣元と有期雇用契約を結んでいる労働者について、
[1]同一の事業所には3年までしか派遣労働者を受け入れてはならず(事業所単位3年ルール。ただし派遣先の労働者の過半数代表の意見を聴取すれば更新可能)、かつ、[2]同一の組織単位に同一派遣労働者は3年までしか受け入れてはならない(個人単位3年ルール)、という規制があります(労働者派遣法40条の2、3)。
このいずれかの規制に違反して派遣労働者を受け入れた派遣先企業に対し、派遣労働者が希望すれば、派遣先企業に直接雇用されることになります(同法40条の6)。
ここで、派遣可能期間である「3年」は、現行派遣法の施行日以後に初めて派遣元と雇用契約を結んだ日(契約を更新した日)からカウントされます。
それより前の雇用契約は考慮されません。相談者様が有期雇用契約の更新を繰り返しているのであれば、おそらく現行派遣法施行日よりも後に契約更新がされているでしょうから、現時点ではカウント開始時期から3年を経過していないことになります。
2 以上述べた理由から、今後も現状どおりの派遣が続き、その結果、3年を超えて派遣が継続していればみなし雇用の可能性があります。
もっとも、契約書には抵触日の記載があるということですから、派遣元もみなし雇用の適用を嫌って、3年で雇用契約を打ち切ってしまうおそれがあります。
3 みなし雇用の適用がないもとで、派遣労働者の側から何かできることはないか、ということについては、
(1)派遣先企業の他の組織単位への異動を求める
(2)派遣元に対し雇用安定化措置(派遣法30条)を求める
(3)派遣元との間で無期雇用に切り替えて派遣を続ける
ということが考えられます。以下に説明します。
(1)派遣先企業の他の組織単位への異動同じ派遣先であっても、同一組織単位(「課」「グループ」など)でなければ引き続き同一派遣労働者の受入れが可能とされているので、派遣先・派遣元に申し入れた上で、別の課などに異動してもらう方法があります。
(2)派遣元に対する雇用安定化措置の要求同一組織単位で継続して3年間働く見込みのある派遣労働者に対しては、派遣元は、[1]派遣先への直接雇用の依頼、[2]新たな派遣先企業の提供(合理的なものに限る)、[3]派遣元での無期雇用(派遣元自社で就業させるもの)、[4]その他のいずれかを選んで実施すべき義務があります(派遣法30条)。どれを選択するかは派遣元に委ねられていますが、厚労省指針では、あらかじめ派遣労働者の希望を聴取して、その希望した措置をとるように努めることを求めています。
派遣労働者の希望が派遣先での直接雇用であれば、その実現に努めることが求められます(派遣元事業主が講ずべき措置に関する指針第2・8・(2))。以上の義務を履行しない派遣元に対しては、指導・助言・指示の対象となります(派遣法48条)ので、都道府県労働局に違反事実を申告して是正を求めることが考えられます(派遣法49条の3)。
(3)派遣元との間で無期雇用に切り替えて派遣を続ける派遣元との間で無期雇用を結んでいる派遣労働者については、3年の期間制限の適用が除外されています(派遣法40条の2、3)。
そこで、派遣元との間の雇用契約を有期から無期に切り替えれば、引き続き同一派遣先企業で就労することが可能です。なお、派遣元が無期雇用への切り替えに同意しなかったとしても、相談者様の場合には自ら申し込めば無期雇用へ切り替えることができるかもしれません。
というのは、有期契約が通算5年を超えている場合、契約期間満了日までの間に無期転換の申込みをすれば、使用者が当該申込みを承諾したものとみなされるからです(労働契約法18条)。
この「5年」は、2013年4月1日以降に開始(更新)した有期雇用契約からカウントしますので、相談者様の場合も、既に5年を超えているのではないでしょうか。
ただし、これによって無期契約に転換してしまうと、派遣先に対するみなし雇用(派遣法40条の6)の適用の余地がなくなります。
派遣元で無期雇用となっても、派遣先と派遣元との間の派遣契約が終了した途端に、派遣元が、他所へ派遣する仕事がないことを理由として、無期雇用の労働者を解雇する事例が後を絶ちません。
派遣元に対して解雇無効を争う余地はありますが、雇用の不安定さは残ります。したがって、相談者様が派遣元に対して無期転換権を行使するか否かは、慎重に検討する必要があります。