相談と回答「一斉に部署異動させて抵触日をリセット。こんな方法がまかり通るのでしょうか?」|派遣法改正から3年・あなたの“今”をお聞かせください|派遣労働者の皆様へのアンケート
派遣法改正から3年・あなたの“今”をお聞かせください

お寄せいただいたご相談と弁護士による回答をご紹介します

Q.

派遣先が3年目を迎える派遣社員を、一斉にぐるっと部署異動させ抵触日をリセットしようとしています。こんな方法がまかり通るのでしょうか?

回答日:2018/08/22

3年目を迎える派遣労働者を部署異動させるとのことですね。2015年の派遣法改正法により定められた「個人単位の期間制限」が問題になり得ると思われますので、説明させていただきます。

「個人単位の期間制限」は、同一の派遣労働者を派遣先の事業所における同一の組織単位に対し派遣できる期間は3年まで という期間制限です。

「同一の組織単位」かどうかは、業務としての類似性や関連性、組織長の業務配分や労務管理上の指揮監督権限を考慮して実質的に判断されますが、いわゆる「課」や「グループ」など(一般に「係」よりも大きい単位)が異なるかどうかがひとつの目安となります。

今回のご相談につきましても、同一の組織単位内で異動させている場合には、期間制限に違反することになります(※2)。一方で、異なる組織単位に異動させる場合には、期間制限に違反しているとは言い切れませんので、争うことは難しいと考えられます。

3年以上継続して雇入れる場合には、直接雇用を検討するのが本来の形だと思います。ですので、期間制限を回避するために異なる組織単位に異動させることは法律の趣旨に反していると思います。もっとも、現在の法律の規制が不十分なため、直ちに違法とは言いにくい状況です。

※2 期間制限に違反している場合の対応について期間制限に違反すると「違法派遣」となり、派遣先が派遣労働者に対して直接雇用を申し込んだものとみなされます(いわゆる「直接雇用申込みみなし制度」です)。

派遣労働者が、派遣先に対し、「直接雇用となることを承諾します」と承諾の意思を伝えれば、申込みを承諾したことになりますので、派遣先との直接雇用が実現することになります。

もっとも、これらの期間制限は、労働者派遣法改正法の施行日である2015年9月30日以降に派遣労働契約が更新されたときから適用されることになっています。

そのため、この日以降に契約が更新されたのか、いつ更新されたのかが重要になります。いつの時点で期間制限に違反することになるのかについては、派遣元から派遣労働者に対して明示することになっております。

派遣元との間の派遣労働契約書や、派遣先から渡される労働条件通知書・就業条件明示書の内容を確認されることをおすすめいたします(※事業所単位の期間制限については、2015年9月30日以降に、あなたの派遣先事業所に新しい派遣労働者が受け入れられた場合には、その時点から3年の期間制限が問題となります)

ただし、期間制限が適用されないケースもございますので、ご留意ください。派遣元事業主で無期雇用されている派遣労働者を派遣する場合、60歳以上の派遣労働者を派遣する場合、終期が明確な有期プロジェクト業務に派遣労働者を派遣する場合、日数限定業務(1か月の勤務日数が通常の労働者の半分以下かつ10日以下であるもの)に派遣労働者を派遣する場合、産前産後休業、育児休業、介護休業等を取得する労働者の業務に派遣労働者を派遣する場合等がこれに当たります。

ご相談に対する回答は以上の通りになります。1人でも入れる労働組合に加入し、労働組合を通じて派遣元や派遣先と交渉するということも検討いただければと思います。

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