相談と回答「派遣会社に契約終了したい旨を伝えても会社に伝えてくれません。」|派遣法改正から3年・あなたの“今”をお聞かせください|派遣労働者の皆様へのアンケート
派遣法改正から3年・あなたの“今”をお聞かせください

お寄せいただいたご相談と弁護士による回答をご紹介します

Q.

派遣会社に契約終了したい旨を伝えても会社に伝えてくれません。仕方ないので、自分から雇用先に伝えたところ、違反だと騒がれました。

会社に行きません、というと、違法なので、損害賠償が請求されると言われます。実際どうなのでしょうか?

正直、時給が低く、生活苦で、病院への通院をしているのですが、治療を制限しないと食べていけません。健康を損ねてまで派遣でいたくないです。

また低い時給で、契約書にない業務も振られます。対応しているのですが、批難され、成果を出せと言われます。数値で結果を見せても、派遣が口出しすること自体、間違いだとパワハラ的な発言もあります。契約終了をしたい旨を派遣会社に伝えても、「いいから出勤してください」と言われ話を聞いてもらえません。

回答日:2018/07/24

相談者の方をAさんとお呼びします。

1 退職について
派遣会社を退職する場合の定めは、Aさんと、派遣会社の間の契約(労働契約)において期間の定めがあるか否かによって異なります。

まず、Aさんと派遣会社の労働契約において期間の定めがない場合には、Aさんは、派遣会社に対して、いつでも退職の申し入れができ、申入日から2週間経過すると、退職の効果が生じます(民法627条)。

次に、Aさんと派遣会社の労働契約において期間の定めがある場合には、やむを得ない事由があれば、直ちに退職することができます(民法628条)。

そして、やむを得ない事由には、疾病のため治療が必要なことも含まれると理解されていますので、Aさんの場合も、やむを得ない事由に該当する可能性があります。

また、Aさんと派遣会社の期間の定めのある労働契約が1年を超えている場合には、契約の初日から1年を経過すると、専門的知識があると厚労大臣が指定する一定の職種を除き、いつでも退職することができます(労働基準法附則137条)。

したがって、この場合、退職にやむを得ない事由は不要です。そして、Aさんが派遣会社を退職すると、労務を提供する義務はなくなりますから、派遣先に出社する必要はなくなります。

なお、Aさんの相談内容を拝見すると、派遣会社は、出勤を促すだけの不適切な対応ですので、後日、退職の意思表示をしたか、いつしたか等についてトラブルになる可能性もあります。

余計なトラブルを避けるためにも、退職の意思表示は、口頭ではなく、文書やメール等で行うことをお勧めします。また、失業保険による給付は、自己都合退職の場合、3か月間制限されますので、念のため、ご留意下さい。

2 有給休暇の取得
派遣会社との契約が、期間の定めのない場合はそうですが、退職の意思表示をしてから現実に退職できるまで、一定期間が必要です。そのため、メールにある事情から、その期間出社することが厳しいということであれば、有給休暇を使ってその期間を過ごすことが考えられます。

有給休暇は、同一派遣会社で6か月以上勤務し、全労働日の8割以上出勤した場合に、10日間与えられます(さらに勤務継続期間が増えると日数も増えますが、割愛します)。派遣労働者も当然有給を取得することが出来ます。

そして有給休暇を付与する責任は、派遣会社にありますので、派遣会社に有給休暇を取得する旨伝えてください。また、退職が前提の場合は、有給日を変更するいわゆる時季変更権の行使が出来ないと理解されていますので、派遣会社に退職前に有休を使うのは困ると言われた場合でも、休むことができます。

3 損害賠償請求するという点について
まず、期間の定めのない場合や、労働基準法附則137条を適用できる場合には、退職したことを理由に損害賠償をすることは出来ません(仮に損害賠償を請求されたとしても、そのような請求は認められません)。

次に、労働基準法附則137条を適用できない期間の定めのある労働契約の場合は、退職事由が当事者の一方の過失によって生じたときは、相手方に損害賠償をする義務があるとの規定があります(民法628条)。

もっともAさんの場合、相談内容に挙げられている事情を前提としますが、結論として、損害賠償をする必要はないと思われます。

派遣法により、派遣会社と派遣先との間では、労働者派遣契約を締結しますが(派遣法26条1項)、その際に、派遣労働者が従事する業務の内容を定めなければならないとされています。

また派遣会社は、派遣労働者に対して、上記内容を伝えなければならないとされております(派遣法34条1項2号)。

そうしますと、派遣会社としては、Aさんの使用者として、また、労働者派遣契約の一方当事者として、Aさんが従事する業務内容を定め、それを派遣先に求めることができますが、メールにある事情からしますと、派遣会社は、派遣先において派遣労働者が従事する業務以外の業務に従事させていることを知りつつ特段の措置をしていないと推測できますので、派遣会社の対応には問題があり、これを理由に退職しても一方の当事者に過失があるとは言えません。

以上のことを前提に対応してみてはいかがでしょうか。

また、自分一人で対応するのが難しい場合は、弁護士に依頼する方法もあります。その場合、一定の条件がありますが、法テラスを使うことにより、比較的廉価で、かつ弁護士費用の分割払いをすることもできます。必要があれば、ご検討下さい。

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